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8月18日の朝9時、予定通り渋谷でレンタカーを調達、名古屋に出発した。名古屋の藤が丘には、去年の冬にオーガニックカフェを開いた青山さんがいる。一行は、柳原、阿部、浅輪、松本、そして私の5人、一応ネストの仲間ということになっているが、真相は定かではない。
今年の夏は、東京は寒い。もう、1週間太陽を見ていない。東北地方も冷夏らしく、農作物の被害が心配される。山形県新庄の米「さわのはな」のトラスト運動を推進する阿部さんが言う。東名高速をひた走り、静岡県に入ったところで何回か日光が射した。少し喜びの声が漏れる。やっと夏休みだ、と。
浜名湖のサービスエリアで休息。そこから1時間も掛からずに藤が丘の店に到着した。渋谷から休息時間を除けば3時間強での到着、青山さんはちよっとびっくりしていた。店には2つの主婦グループがお茶をしながら歓談中で、一行はカウンターを占拠した。店内には天然酵母のパンが陳列され、有機コーヒーが出される。ドリアやカレーなど、簡単な食事もできる。ピタサンドの野菜は、ニンジン、ピーマン、モロヘイヤなど、どこか土臭い懐かしさのあるものばかりで、運転手の松本さんはオーガニックビールを2杯頂戴しながら御満悦だった。
近くには愛知学院大学のキャンパスがある。だが、青山さんは、なかなか学生がリピーターになってくれないと、ちょっと残念そうだ。お店の壁に立派なアートを描いてくれた若者も、その後は来店してくれていないそうだ。また、大学教員も期待通りではないようで、彼らは行政から予算のつくものにしか関心を示さないのかなと、疑問を抱いていた。しかし、やがてお店は3つ目のテーブルも埋まり、ささやかながら満員御礼。私はオーガニックビールとピタサンドを堪能する。阿部さんは、かご一杯にお土産を購入していた。
青山さんは、去年の春まで東京の有機野菜の物流会社に勤めていた人だ。したがって、その筋の情報には強い。私が、横浜の某百貨店の青果売り場は、有機農法か減農薬の野菜が半分近くを占めていると言うと、むしろそれだけの品揃えをそうした農法の野菜で実現できることが怪しいと言う。食の安全性を重視した営業を行なう大手スーパーは、農家と個別契約を行ない必要な野菜を作らせているが、農薬を使わなければ出来高にばらつきが生じる。不作のとき、その大手スーパーは、契約農家に自腹で不足分の野菜を市場で調達してくるよう強要するので、農家はそうした大手流通小売店と契約するものとしないものとに二分されているとのことだ。資本制の中で行なえば、納期がこうして重視されるのはむしろ当然のことだ。契約金を農家に支払い、消費者には食糧を供給するという責任を、大手の流通小売店はこうして果たしている。だが、こういうことを続けていたのでは、結果的に有機農家の目的も達せられないし、安全な食を入手したいという消費者の欲望にも適わない。大手スーパーが農家と結ぶ契約とは違ったものが、その売買契約に必要であることは明白だ。
アソシエーションとは、売り買いの在り方や資金の調達方法など、こうした過程の在り方を、従来の資本主義的過程独自のものとは異なったものに変えていくことだ。アソシエーションは、運動として、とくに有機農業だけを支持するわけではないし、フェアトレードだけを支援するわけではない。だが、こうした過程の在り方が変わらなければ、有機農業もフェアトレードも、芸術家たちの自由な創作活動も、より広く、深く営んでいけるようにはならない。
青山さんは、宅建取得を目指して勉強中とのことだった。お店に卸してくれる有機農家の多くが借地なのだが、やっと2,3年して土ができたところで、地主に出ていって欲しいと言われることが多いという。いわば「有機難民」だ。新たに土地を探そうにも、不等な占有権を主張するのではないかという疑念を晴らすのが難しく、なかなか貸し手が現れないそうだ。こうした問題解決に、青山さんは一役買いたいとのことだろう。ここでも、オルタナティヴな契約が、アソシエーションが、必要なわけだ。法律家の柳原さんは、法律よりも契約優先だから目的に応じた賃貸契約を締結すればいいのだ、と助言していた。住居として利用するわけではないので、貸し手が心配するような法外な占有権を主張することはありえないのだから、と。
予定の時刻を過ぎて、店を出て、京都に向かった。夜は田中さんの実家に一泊させていただく予定だ。田中さんと京都で落ち合い、夕食を済まして田中邸に着いたのは、9時を過ぎていた。もてなしを受け、床に着いた。柳原さんは、久しぶりに夏らしい暑い夜だと喜んでいた。私も、ここ数日の関東地方の冷たい夏を思うと、ビールがあっという間に汗に変わる気温に、懐かしさを感じていた。
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